❖ 添付書面は原本還付できるのが原則

■ 登記申請に添付する書面は、原則として、原本還付(原本の返却)してもらうことができます。

■ しかし、原本還付請求ができない書面が法令で定められており、該当するものは還付されません。

不動産登記規則 第五十五条(添付書面の原本の還付請求)

1  書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる
ただし、令第十六条第二項 、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第一項第三号 (第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。

◎ 印鑑証明書

■ 原本還付請求できる場合とできない場合があります。

〇 所有権に関する登記義務者が添付する印鑑証明書

■ 登記簿上の所有者が登記義務者となって登記申請をする場合(売買・贈与・交換等の所有権移転登記、抵当権等の担保設定登記)、所有者の印鑑証明書を添付しなければいけませんが、この印鑑証明書は原本還付できません。

不動産登記規則 第五十五条(添付書面の原本の還付請求)

1  書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。
ただし、(不動産登記)令第十六条第二項 、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第一項第三号 (第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない【=原本還付できない】

不動産登記令 第十六条 (申請情報を記載した書面への記名押印等)

1  申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令【=不動産登記規則47条1項】で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。
2  前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令【=不動産登記規則47条1項】で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市にあっては、市長又は区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。

不動産登記規則 第四十七条  

(不動産登記)令第十六条第1項 の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一  委任による代理人が申請書に署名した場合
二  申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
三  申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)
イ 所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの
(1) 当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)
(2) 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
(3) 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
(4) 信託法 (平成十八年法律第百八号)第3条第三号 に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
(5) 仮登記の抹消(法第110条 前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)
(6) 合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記
ロ 所有権の登記名義人であって、法第22条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの
ハ 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第22条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの
ニ 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第22条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第3第三号 に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの
ホ 法第21条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人

〇 承諾書に添付する印鑑証明書

■ 利害関係人等の承諾書が登記申請に必要な場合、承諾者の印鑑証明書を添付しなければなりませんが、この印鑑証明書は原本還付できません。

不動産登記規則 第五十五条 (添付書面の原本の還付請求)

1  書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。
ただし、令第十六条第二項 、第十八条第二項若しくは(不動産登記令)第十九条第二項又はこの省令第四十八条第一項第三号 (第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない【=原本還付できない】

不動産登記令 第十九条 (承諾を証する情報を記載した書面への記名押印等)

1  第七条第一項第五号ハ若しくは第六号の規定又はその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならない。
2  前項の書面には、官庁又は公署の作成に係る場合その他法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

〇 利益相反取引承認の取締役会(株主総会)議事録に添付する印鑑証明書

■ 会社と取締役間の不動産の売買や、会社所有の不動産に取締役を債務者とする抵当権を設定する場合など、株式会社と取締役(又は関連会社)の利害が相反する取引について登記申請する場合、取締役会(又は株主総会)における承認決議の議事録が必要になります。

会社法 第三百五十六条(競業及び利益相反取引の制限)

1  取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一  取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二  取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三  株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2  民法第百八条 の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

会社法 第三百六十五条(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)

1  取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
2  取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

■ この取締役会(株主総会)議事録には、会社と出席取締役全員の印鑑証明書を添付しなければいけませんが、この印鑑証明書については、承諾書と同じ扱いで原本還付できません。

取締役会議事録に添付する印鑑証明書の要否(昭和45年8月27日民事三発第454号民事局第三課長回答)

利益相反議事録に添付された取締役の印鑑証明書の原本還付の要否(民事局質疑事項集 87問)

不動産登記令 第十九条 (承諾を証する情報を記載した書面への記名押印等)

1  第七条第一項第五号ハ若しくは第六号の規定又はその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならない。
2  前項の書面には、官庁又は公署の作成に係る場合その他法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

〇 遺産分割協議書に添付する印鑑証明書

■ 遺産分割協議による相続登記を申請する場合、不動産を相続する人以外の法定相続人全員の印鑑証明書を添付しなければいけませんが、この印鑑証明書については、特に制限する規定がないので、原本還付請求できます。

遺産分割協議書への印鑑証明書添付の要否(昭和30年4月23日民事甲第742号)

〇 上申書(他に相続人がないことの証明書)に添付する印鑑証明書

■ 登記申請書に添付すべき公的な証明書が提出できない下記のような場合、「上申書」または「他に相続人がないことの証明書」という書類を作成し、申請人・法定相続人の印鑑証明書を添付しなければいけませんが、この印鑑証明書については、特に制限する規定がないので、原本還付請求できます。

相続登記申請の際、除籍謄本・改製原戸籍謄本が廃棄されたり焼失していたりして、相続関係を完全に証明できない場合

相続登記や所有権登記名義人(住所・氏名)変更登記を申請する際、戸籍の除附票・戸籍の改製原附票が廃棄されていて、被相続人や申請人の住所変更の経緯を完全に証明できない場合

除籍謄本が廃棄処分により交付不能の場合(質疑応答【5521】登記研究367-P138)

◎ 住所証明書

■ 不動産登記申請において、所有権の登記名義人となる者は、住所証明書を添付しなければいけません。

■ 具体的には、個人の場合は「住民票の写し」「戸籍の附票」、会社の場合は「履歴事項全部証明書」「現在事項全部証明書」「代表者事項証明書」などになりますが、これらの住所を証明する書類は、特に制限がないので原本還付請求できます。

不動産登記令 第七条(添付情報)

登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
一  申請人が法人であるとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該法人の代表者の資格を証する情報
二  代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報
三  民法第四百二十三条 その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位原因を証する情報
四  法第三十条 の規定により表示に関する登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市にあっては、区長とする。第十六条第二項及び第十七条第一項を除き、以下同じ。)、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
五  権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
イ 法第六十二条 の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項 に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)
(2) 法第百八条 に規定する仮登記を命ずる処分があり、法第百七条第一項 の規定による仮登記を申請するとき 当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本
ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報
六  前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報

不動産登記令 別表 30項

◎ 相続証明書

■ 相続登記を申請する際、法定相続人を証明するため、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)・除籍謄本・改製原戸籍謄本を添付しなければいけません。

■ また、遺産分割協議による相続登記の場合は、遺産分割協議書も添付します。

■ これらの相続関係を証明する書類については、特に制限もないので原本還付請求できます。

◎ 変更証明書


■ 所有権登記名義人(住所・本店)変更登記を申請する際、過去の住所・本店の変遷を証明するため、個人であれば「住民票除票の写し」「戸籍の除附票」「戸籍の改製原附票」、会社であれば「閉鎖事項全部証明書」などを添付する場合があります。

■ これらの証明書も、特に制限はなく原本還付請求できます。

◎ 当該申請のためにのみ作成された書類

■ 「その登記申請のためだけに作成された書類」については、原本還付請求できません。

不動産登記規則 第五十五条(添付書面の原本の還付請求)

1  書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。
ただし、令第十六条第二項 、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第一項第三号 (第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない【=原本還付請求できない】

■ 具体的には「登記原因証明情報」「委任状」「上申書」などがそれに当たりますが、他の法務局にも提出する可能性がある場合は、「その登記申請のためだけに作成された書類」とは言えないので、原本還付請求できます。