会社の登記事項証明書のうち、②履歴事項証明書が、現在有効な事項はもちろん、過去の役員や商号等の履歴も記載されている一番情報量の多い証明書です。
その一方、①現在事項証明書は、主に現在有効な事項、③代表者事項証明書は代表者に関する事項のみが記載された証明書です。
料金も同じですから、②履歴事項証明書を請求すれば、より多くの使用目的に適います。
①現在事項証明書 ②履歴事項証明書 ③代表者事項証明書の記載事項 比較表
1 登記事項証明書の記載事項は、次の各号の区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる事項(第二号及び第三号の場合にあつては、法第百三十三条第二項 の規定による登記の更正により抹消する記号を記録された登記事項及びその登記により抹消する記号を記録された登記事項を除く。)とする。
二 履歴事項証明書 ①前号の事項【=現在事項証明書の記載事項】、②当該証明書の交付の請求があつた日(以下「請求日」という。)の三年前の日の属する年の一月一日(以下「基準日」という。)から請求日までの間に抹消する記号を記録された登記事項及び③基準日から請求日までの間に登記された事項で現に効力を有しないもの
三 閉鎖事項証明書 閉鎖した登記記録に記録されている事項
四 代表者事項証明書 会社の代表者の代表権に関する登記事項で現に効力を有するもの
①現在事項証明書
①現在事項証明書 には、一部の例外事項を除いて、現在の登記事項しか載っていません。
原則
・現に効力を有する登記事項
例外
・会社成立の年月日
・取締役、会計参与、監査役、代表取締役、特別取締役、委員、執行役、代表執行役及び会計監査人の就任の年月日
・会社の商号の登記の変更に係る事項で現に効力を有するものの直前のもの
・会社の本店の登記の変更に係る事項で現に効力を有するものの直前のもの
しかし、②履歴事項証明書 と比べて見やすいというメリットがあります。
例えば、株式会社の「役員区」などは変更が多いので、②履歴事項証明書だと少し見にくいですが①現在事項証明書だと現在の役員が一目瞭然です。
現在事項証明書の見本
②履歴事項証明書
②履歴事項証明書には、①現在事項証明書と③代表者事項証明書に記載される事項は、全部記載されています。
したがって、税務署や銀行などの金融機関に提出を求められている場合は、②履歴事項証明書を取得すれば、まず問題ありません。
不動産登記の申請書に「代理権限証明情報」や「住所証明情報」として添付する場合も、すべて②履歴事項証明書で構いません。
履歴事項証明書 に記載される事項
②履歴事項証明書には、「①現在事項証明書に記載される事項」と、「基準日以後に抹消された事項」が記載されます。
当該証明書の交付の請求があつた日(以下「請求日」という。)の三年前の日の属する年の一月一日(以下「基準日」という。)から請求日までの間に抹消する記号を記録された登記事項
基準日とは
事例として、平成25年10月1日に②履歴事項証明書を請求した場合を考えてみます。
まず「当該証明書の交付の請求があつた日」は平成25年10月1日の請求日になります。
「当該証明書の交付の請求があつた日(以下「請求日」という。)の三年前の日」というのは、ちょうど3年前の平成22年10月1日
「当該証明書の交付の請求があつた日(以下「請求日」という。)の三年前の日の属する年の一月一日」というのは、平成22年1月1日です。
これを基準日と言います。
抹消する記号を記録された登記事項とは
「抹消する記号を記録された登記事項」とは、「抹消された登記事項」という意味なので
ということになります。
履歴事項証明書の見本
閉鎖事項証明書
②履歴事項証明書に記載されなかった登記事項は、閉鎖されてしまいます。
したがって、②履歴事項証明書に記載されない「過去の登記事項」を証明する必要がある場合は、閉鎖事項証明書を請求します。
また、以下のような他の原因でも会社の登記記録は閉鎖されます。
会社を解散し、清算結了した
他の管轄の法務局へ本店移転した
吸収合併された
特例有限会社が株式会社へ商号変更した
持分会社(合名・合資・合同)が株式会社へ組織変更した
閉鎖された会社の登記記録が必要なときも、閉鎖事項証明書を取得します。
閉鎖事項証明書の見本
③代表者事項証明書
③代表者事項証明書 には、以下の項目のみ記載されます。
会社法人等番号
商号
本店
代表者の住所
代表者の氏名
肩書き(代表取締役・清算人・代表社員等)
記載事項としては、一番限定された証明書になりますが、不動産の登記申請に「代理権限証明情報」として添付する際などに使用されています。
代表者事項証明書の見本
「全部事項証明書」と「一部事項証明書」
会社の登記事項証明書には、「全部事項証明書」と「一部事項証明書」という区別もあります。
①現在事項証明書 ②履歴事項証明書 ③閉鎖事項証明書は、時系列により記載される事項が異なりますが、「全部事項証明書」と「一部事項証明書」の違いは、区を基準としたものになります。
会社の登記事項は、区という単位でグループ分けされています。
1 商業登記簿(以下「登記簿」という。)は、登記簿の種類に従い、別表第一から第八までの上欄に掲げる各区に区分した登記記録をもつて編成する。
ただし、外国会社登記簿は、日本に成立する会社で当該外国会社と同種のもの又は最も類似するものの登記簿の種類に従い、別表第五から第八までの上欄に掲げる各区に区分した登記記録をもつて編成する。
2 前項の区には、その区分に応じ、別表第一から第八までの下欄に掲げる事項を記録する。
一部事項証明書の記載事項
会社の登記記録の一部の区について前項第一号から第三号までの登記事項証明書の交付の請求があつたときは、その登記事項証明書には、①商号区、②会社状態区及び③請求に係る区について当該各号に掲げる事項・・・・・を記載する。
一部事項証明書も、やはり銀行などの金融機関が発行請求する場合が多いです。
「銀行の商号・本店変更事項、合併事項のみを記載した一部事項証明書」などが、よく不動産登記の実務ではお目にかかります。
組み合わせ
時系列による「現在事項証明書」「履歴事項証明書」「閉鎖事項証明書」と、区という基準で記載が異なる「全部事項証明書」と「一部事項証明書」とは、それぞれを組み合わせた形で発行されます。
一般の方が、税務署や銀行から提出を要求されたり、不動産登記の申請のために司法書士から請求された場合は、「履歴事項全部証明書」で問題ありません。