預金債権の消滅時効

銀行預金の消滅時効期間は商事債権として5年ですが、信用金庫・労働金庫・信用協同組合などは、商法の適用がなく10年となります。

銀行預金は、預金者が債権者、銀行を債務者とする債権です。

預金者が亡くなったため凍結された状態で、何も手続きしなければ、期間の経過により債権の消滅時効にかかるというのが、商法・民法上の原則です。

しかし、時効は援用しない限り効力を生じませんので、自動的に預金債権が消滅する訳ではありません。ほとんどの金融機関は、この消滅時効を援用せずに、期間の経過後も相続人からの支払いに応じています。

商法

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。


民法 第百六十七条(債権等の消滅時効)

1  債権は、十年間行使しないときは、消滅する
2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

例えば、三菱東京UFJ銀行では、普通預金に関して以下のような約款規定がありますが、はっきりとした年数を区切って、取引を停止してしまっているわけではないようです。

三菱東京UFJ銀行 定期預金等規定集 普通預金規定

13 解約等
(4)この預金が、当行が別途表示する一定の期間預金者による利用がなく、かつ一定の金額を超えることがない場合には、当行はこの預金取引を停止することができるものとします。

以上のことから、預貯金口座の相続手続きの期限は、最後の利用から少なくとも5年は大丈夫と言うことができます。しかしその後となると、銀行の判断に委ねられることになり不確実ですから、なるべく早めに手続きをしておかれると良いでしょう。

相続税がかかる場合

相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に行わなければいけません。

期限に遅れたら、延滞税(年7.3%~14.6%)が課せられてしまいます。

相続する預金を、相続税の納付資金に充てようとする場合は、期限に間に合うように銀行に対する相続手続きを終わらせておく必要があります。

実際に預金を引き出せるようになるまで、銀行に相続手続き書類を提出してから、1ヶ月程度かかる場合がありますから、スケジュールに余裕を見て手続きを行いましょう。

相続人死亡等のリスク

相続財産の総額が基礎控除額内(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)におさまり、相続税の申告が必要ない方の場合には、10ヶ月以内という期限は関係ありません。

しかし、この場合でも放置せずに相続手続きされることをおすすめします。

例えば、法定相続人である兄弟2人の間で、預金を弟が全部相続することが合意されていたとします。

しかし、何ら手続きをしない間に兄が亡くなってしまった場合、兄の妻や子供が法定相続人となるので、預金を弟が全部相続することに、兄の妻や子供たちが承諾し協力してもらえないことには、兄と約束したとおりの手続きが出来なくなってしまいます。

死亡以外にも、認知症で意思表示ができなくなったり、行方不明になったりすると、手続きに支障をきたします。事情が変わらないうちに、手続きを済ませておくことが大切です。

印鑑証明書・戸籍謄本の期限の問題

銀行に提出する印鑑証明書や戸籍謄本は、発行後3~6ヶ月という期限が設けられています。

相続人の間で押印書類を回したり、銀行が複数あって順番に手続きをしている間に、証明書の期限が切れてしまうことがあります。

戸籍謄本を取り直すにも費用がかかりますし、他の相続人の方に印鑑証明書の再交付を依頼するのが難しい場合もあります。

証明書取得のタイミングと有効期限に注意して、手続きをすすめると良いでしょう。

預貯金口座の相続手続きについて、ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談下さい。