不動産の「物理的状況・権利関係についての登記」を証明する書類の様式が、法務局の登記事務のコンピュータ化に伴って変更されており、名称も「不動産登記簿謄本」から「不動産登記事項証明書」へと変更されています。
昭和63年から平成20年にかけて、法務局の登記システムが、従来の簿冊に記載する方法から、登記事項をデータ入力して記録する方式へと移行しました。
それに伴って、発行される証明書も様式が変り、名称も「不動産登記簿謄本」から「不動産登記事項証明書」へと改められました。
しかしながら、「不動産登記簿謄本」という呼び名が、長く使われてきたこともあって、現在でも「不動産に関する証明書」を指して使われていることがあるようです。
不動産登記事項証明書の見本
不動産登記簿謄本の見本
現在では、法務局全庁がコンピュータ化されているため、「不動産登記簿謄本」を取得する機会はほとんどなく、「不動産登記事項証明書」が発行されます。
一般の方が「不動産登記事項証明書」を必要とされるのは、「税務署などの公的機関」や「銀行などの金融機関」に提出を求められた場合が多いと思います。
必要書類として「不動産登記簿謄本」と記載されているのに、法務局に行ったら「不動産登記事項証明書」が発行されるため、混乱される方が多いようですが、「不動産登記事項証明書」を提出されれば問題ないでしょう。
「このような相談がありました。」
住宅取得控除を申請するため、税務署から必要な書類を取り寄せたところ、「登記簿謄本の写しが必要」と記載されていた。
このため、法務局に赴き、登記簿謄本の交付を申請しようとしたが、局内には登記簿謄本の申請方法に関する案内が全くなかった。
法務局職員に説明を求めたところ、同じ証明書であるのに、税務署では「登記簿謄本」といい、法務局では「登記事項証明書」と呼んでいることが分かった。
同じ証明書を役所間で別の名称を用いることは、申請者に混乱を招くものであり、統一してほしい。
「次のように解決されました。」
本事案は、法務省が登記事務を電算化した結果、従前の登記簿謄本等の名称を登記事項証明書と改めたのに、国税庁が従前の登記簿謄本という名称を申告の説明資料に使用していたことに起因する苦情でした。
相談を受けた管区行政評価局は、関係の地方法務局からの事情聴取及び現地確認をした結果、同法務局では、登記事務の電算化が完了した後の数か月間は、「登記簿謄本を登記事項証明書に変更した」旨の案内を行っていましたが、その後、周知されたと判断し、申請書記載コーナーには何の案内も掲示されていないことが判明しました。
このため、同法務局に改善を申し入れた結果、申請書記載コーナーの利用者の目線に近い位置に、「コンピュータ化に伴い、登記簿謄本等は登記事項証明書にかわりました」との表示がなされました。
また、国税局から事情聴取した結果、苦情の対象となっている申告の説明資料は国税庁が作成していたため、国税局から国税庁に資料の改定が依頼され、次回(平成12年分)の確定申告から改定されています。
現在でも「不動産登記簿謄本」を取得する場合
もっとも、現在でも「不動産登記簿謄本」を取得することが、全くないわけではありません。
登記実務上、下記のような場合は「不動産登記簿謄本」を取得する機会があります。
- コンピュータ化される前の権利状態を知るために、閉鎖登記簿謄本を取得する場合
- 何らかの理由でコンピュータに登記データを移行することができなかった場合(「事故簿」と言われる電子化不適合簿)
マンションの敷地など多数の人の共有で、全持分を合計しても「1」にならない土地
町名等に変更があったが、所有者から所在変更登記の申請がない建物