①順位番号

所有権に関する登記を申請すると、申請の順番により、登記官は登記簿の甲区欄に①順位番号を記載します。

不動産登記規則第百四十七条(順位番号等)

1  登記官は、権利に関する登記をするときは、権利部の相当区に登記事項を記録した順序を示す番号を記録しなければならない。

登記された権利の優劣を決める機能

①順位番号には、登記された権利の優劣を決める大切な役割があります。

甲区(所有権に関する事項)に登記した権利の順位は、順位番号の若い方(数字の小さい方)が優先します。

不動産登記法第四条(権利の順位)

1 同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。

不動産登記規則第二条(登記の前後)

1  登記の前後は、登記記録の同一の区(第四条第四項の甲区又は乙区をいう。以下同じ。)にした登記相互間については順位番号別の区にした登記相互間については受付番号による。

順位番号と権利の優先関係の具体例

例えば、上記の登記記録の場合、3番の「差押」登記より、2番の「所有権移転仮登記」が優先します。

「3番差押から競売手続きにより所有権を取得した買受人」は「2番の所有権移転仮登記の本登記」が申請された場合、Bには勝てません。

4番の所有権移転を受けたDは「2番の所有権移転仮登記の本登記を受けたB」にも「3番差押から競売手続きにより所有権を取得した買受人」にも、勝てません。

先順位(若い順位番号)の「所有権移転仮登記」や「差押登記」がある場合、それらの登記が、所有権移転登記に先立って抹消されない限り、Dは完全な所有権を取得できません。

不動産を購入する場合は、先順位の権利がないか、登記記録をよく確認することが必要です。

②登記の目的

甲区の②登記の目的欄には、所有権に関してどのような権利変動が発生したかが、記録されます。

甲区(所有権に関する事項)欄で、実務上よく見かける「登記の目的」の具体例としては、以下の様なものがあります。

所有権移転

所有権が移転した場合です。

実体法上所有権が移転し、登記手続き上も添付書類が完全にそろって登記申請された場合です。

所有権移転仮登記(1号仮登記)

実体法上所有権は移転しているが、登記手続き上の添付書類(権利書・登記識別情報・農地法の許可書・利害関係人の承諾書etc)がそろわない場合、所有権の順位だけを保全(確保)するため、所有権移転仮登記(1号仮登記)を申請することができます。

不動産登記法 第百五条(仮登記)

仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一  第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき
二  第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

不動産登記規則 第百七十八条(法第百五条第一号 の仮登記の要件)

(不動産登記)法第百五条第一号 に規定する法務省令で定める情報は、登記識別情報又は第三者の許可、同意若しくは承諾を証する情報とする。

「実体法上所有権が移転している」とは、不動産売買契約が成立し、売買代金も支払われるなどして、売買契約で定めた所有権移転の効力が生じ、買主が所有権者となった状態です。

しかし、法務局に提出する添付書類が不足しているため「所有権移転」登記を申請することができない(手続法である不動産登記法上の所有権移転登記の要件を満たしていない)、という場合に申請できるのが、所有権移転仮登記(1号仮登記)です。

もっとも、通常の不動産取引実務で、代金決済時に書類が足りないことを理由に、「所有権移転仮登記を申請」という事はしません。

なぜなら、仮登記には対抗力が無いので、買主は対抗要件を備えるため、再度売主の協力を得て「所有権移転本登記」を申請することが必要になります。売買代金を全額支払ったにも拘わらず、買主が不安定な地位になるからです。

所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)

所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)は、1号仮登記と異なり、まだ実体法上買主に所有権が移転していない場合に申請する仮登記です。

将来、所有権の移転を受ける請求権を権利者が持っている場合に、順位を保全(確保)するために申請することが法律上認められています。

不動産登記法 第百五条(仮登記)

仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一  第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二  第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

実務上よく見かける具体例としては、「売買予約契約」というものを締結した場合や、債権者との間で「代物弁済予約契約」というものを締結した場合などがあります。

昔は、銀行などの金融機関が貸し付けを行った場合に、抵当権を設定するのはもちろん「代物弁済予約契約」も同時に締結して「代物弁済予約」を原因とする所有権移転請求権仮登記も申請することがありました。

貸付金の返済が滞った場合に、代物弁済の予約完結権というものを行使して、不動産の所有権自体を銀行が取得できるという契約です。

しかし、このような契約により債権者に不動産の丸取りを認めることは、不動産の価値が債権額を大きく上回る場合、債務者が不当に損失を被ることになります。

そこで、仮登記担保契約に関する法律(昭和五十三年六月二十日法律第七十八号)が制定され、強行法規として債権者には清算義務が課されることになりました。

現在では、銀行の自粛などにより、代物弁済予約契約はほとんど見られなくなり、新たに所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)が申請されることは減りましたが、過去の登記事項としては、まだ見かけることはあると思います。

もちろん、所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)のある不動産の購入を検討される際は、その権利者との交渉により、先行して仮登記を抹消できる状態でなければ、購入すべきではありません。

司法書士や不動産仲介業者などの専門家と相談しながら、慎重に検討すべきだと思います。

条件付所有権移転仮登記

条件付所有権移転仮登記とは、所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)と似ていますが、ある一定の条件が成就することにより実体法上所有権が移転する場合などに申請する仮登記です。

実務上よく見かける具体例としては「金銭消費貸借契約の債務不履行」を条件として代物弁済するという契約などによる仮登記です。

不動産登記法上の明文はありませんが、①実体法上まだ所有権が移転していない点、②順位保全の必要性がある点で、所有権移転請求権仮登記(2号仮登記)とほとんど変わらないため、解釈上認められている仮登記です。

「金銭消費貸借契約の債務不履行」を条件として自動的に発効する代物弁済契約も、「金銭消費貸借契約の債務不履行」があれば予約完結権を行使して効力を発生させられる代物弁済予約契約も、実質的にはあまり変わりません。

したがって「仮登記担保契約に関する法律」の適用対象であり、返済が滞っても債権者は不動産を丸取りできず、清算義務が課されています。

差押登記

強制競売の開始決定があった場合または抵当権などの不動産担保権を実行する場合に、裁判所により差押の登記がされます。

民事執行法 第四十五条(開始決定等)

1  執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。

民事執行法 第四十六条(差押えの効力)

1  差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。
ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。

民事執行法 第百八十八条(不動産執行の規定の準用)

第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。

強制競売による差押は、確定判決・裁判上の和解・強制執行認諾文言のある公正証書などの債務名義を持っている債権者でなければできません。

差押は、そのような法律上ある程度強い地位にある債権者か、担保権を持っている債権者が行える手続きということになります。

民事執行法 第二十二条(債務名義)

強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一  確定判決
二  仮執行の宣言を付した判決
三  抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二  仮執行の宣言を付した損害賠償命令
四  仮執行の宣言を付した支払督促
四の二  訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法 (平成二十三年法律第五十一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)若しくは家事事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五  金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六  確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二  確定した執行決定のある仲裁判断
七  確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)【ex裁判上の和解調書】

但し、税金等を滞納した場合に税務署等の国家機関が行う差押は、債務名義なく行われます。

仮差押

差押に必要な債務名義がない債権者も、債務者の所有する不動産から債権を回収するために「仮差押」を裁判所に申し立てることができます。

仮差押の申立が認められれば、裁判所により「仮差押」の登記がされます。

債権者が訴訟を提起して確定判決のような債務名義を得るにも時間がかかります。

その間に債務者の不動産が処分されたりすると、債権者は勝訴しても強制執行する財産自体がなくなり、現実的に債権を回収することができなくなってしまいます。

そのような事を避けるために、債権者が訴訟(本案訴訟と言います)を提起して債務名義を得るまでに不動産が処分されても強制執行を可能とするため、仮差押という手続が認められています。

民事保全法 第一条 (趣旨)

民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

仮差押は、訴訟前に債務者の財産の処分を制限する強い効果を発生させるので、借用書などを提出して債権の存在を疎明(そめい)し、債務者に生じる可能性のある損害を担保するため、債権者が供託することが必要になる場合があります。

疎明(そめい)とは

確信ではなく、確からしいという推測を裁判官に生じさせる当事者の行為。または、これに基づき裁判官が一応の推測を得ている状態。(出典:デジタル大辞泉)

買戻特約

不動産売買において、売買契約と同時に買戻しの特約をすることができます。

買戻しの特約は、売買代金全額と契約にかかった費用を買主が売主に返還すれば、売主が不動産を買い戻せるという約束です。

買戻特約を登記すれば、売主が買戻しをする前に、買主が第三者に不動産を売却したりしていても、買い戻す権利を対抗できます(主張できます)。

民法 第579条(買戻しの特約)

不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。

この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

実務的によく見かけるのは、UR都市機構が設定している買戻特約の登記です。

10年の買戻し期間を設定して登記されているので、10年以上経過すれば「期間満了」により買戻権は実体法上消滅するのですが、買戻特約の登記のある不動産を購入する場合は、売主側で買戻特約の登記を抹消してもらわなければいけません。

③受付年月日・受付番号

不動産登記の各申請は、受付年月日・受付番号で特定されます。

不動産登記を申請すると、受け付けられた順番に従い、連番で受付番号が振られます。

法務局窓口で申請した場合も、インターネットによるオンライン申請をした場合も、全申請に重複がないようシステムにより自動的に受付番号が決定されます。

法務局ごとに1年を通じて連番が振られ、年始には1番に戻ります。

申請に補正事由や却下事由がなく登記が完了すると、その申請による登記の内容が記載されるとともに「③受付年月日・受付番号」欄にその申請の受付年月日・受付番号が記載されます。

登記の先後を決定するという機能

「受付年月日・受付番号」には、申請された登記の先後を決定するという重要な機能があります。

①順位番号も登記の先後を決定する機能があります。

しかし、甲区(所有権に関する事項)どうし、乙区(所有権以外の権利に関する事項)どうしの登記の先後は①順位番号で決定できますが「甲区の所有権移転仮登記」と「乙区の根抵当権設定登記」の先後は、それぞれ順位番号を比較しても決められません。

したがって、その法務局管轄内の全ての不動産登記申請に通し番号で振られている受付番号によって先後が決定されます。

不動産登記規則 第二条(登記の前後)

1  登記の前後は、登記記録の同一の区(第四条第四項の甲区又は乙区をいう。以下同じ。)にした登記相互間については順位番号、別の区にした登記相互間については受付番号による
2  法第七十三条第一項 に規定する権利に関する登記であって、法第四十六条 の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有するものと当該土地の登記記録の権利部にした登記との前後は、受付番号による。

権利書・登記識別情報を特定する機能

法務局で発行された権利書や登記識別情報には「受付年月日・受付番号」が記載されています。

権利書・登記識別情報に記載されている「受付年月日・受付番号」と、不動産の登記事項証明書に記載されている「受付年月日・受付番号」が一致していることを確かめることにより、その権利書・登記識別情報の持主はその不動産の所有者であることが推定されます。

売買や贈与による所有権移転登記の申請書には、不動産の登記事項証明書に記載されている所有者が所有権を取得した「受付年月日・受付番号」と同じ「受付年月日・受付番号」の記載のある「権利書・登記識別情報」を添付(提供)しなければいけません。

「受付年月日・受付番号」は、不動産決済の立会時に、司法書士が必要な「権利書・登記識別情報」を確認するのにも、非常に重要な役割を果たしています。

④権利者その他の事項欄

「④権利者その他の事項欄」には、申請された権利について「②登記の目的」以外の詳細事項が記載されます。

権利者の表示

所有権に関する権利を取得した者の住所・氏名が記載されます。

所有権移転登記や所有権保存登記により所有権を取得した場合は「所有者」と記載されます。

所有者が複数いる場合は「共有者」と記載されます。

仮登記権利者の場合は「権利者」と記載されます。

買戻特約の登記の場合は「買戻権者」と記載されます。

登記原因の表示

所有権に関する権利を取得した登記の原因とその年月日が記載されます。

所有権移転登記の原因として実務上よく見られるのは「売買」「贈与」「相続」などでしょう。

他にも「交換」「財産分与」「共有物分割」といったものもあります。

真正な登記名義の回復

「真正な登記名義の回復」という、登記原因を見かけることがあるかもしれません。

これは、前の所有者への移転登記が間違っていたので、これを修正するために、真の所有者へ登記名義を回復するという意味合いの登記原因です。

しかし、「真正な登記名義の回復」は、所有権移転登記の原因が不明確であるため、これを原因とする登記がされた不動産の購入や担保設定にあたっては、所有者の権利取得の経緯などに、より慎重な調査が必要だと考えられます。

住宅ローンの審査などに影響する場合もあるようですので、ご注意下さい。