権利書・登記識別情報を紛失しても登記はできます

権利書・登記識別情報の必要な登記にそれらを添付できない場合、次のいずれかの方法を使って、登記申請を行うことが出来ます。

本人確認情報

本人確認情報は、登記申請の当事者が、登記名義人本人であることを、司法書士が面談して確認し作成するものです。

司法書士は、特別に重い責任を負いますので、通常の登記申請に比べ登記費用が高くなります。

不動産登記法 第百六十条(虚偽の登記名義人確認情報を提供した罪)

第二十三条第四項第一号(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による情報の提供をする場合において、虚偽の情報を提供した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

事前通知

権利書・登記識別情報無しで登記申請を行った後、法務局から登記義務者に対し、申請された登記内容に間違いないかを尋ねる通知書が届き、登記名義人が署名捺印して返送することによって、登記手続きが進められる方法です。

事前通知の見本

他の方法より登記完了までの時間がかかりますが、本人確認情報を用いるより費用が少なく出来るので、親族間での贈与の登記などには適した方法だと思います。

けれども、一般的な不動産の売買や、担保設定などの登記申請には使えません。

なぜなら、登記が完了するかどうかが、代金決済や融資実行の段階では不確実で、後日登記義務者(売主・担保提供者)が通知書を返送しなければ、登記が却下されるという大きなリスクがあるからです。

公証人による認証

登記申請に先立って公証人役場に出向き、公証人の面前で登記関係書類に署名捺印して、認証を受けた書類を登記申請に使用する方法です。

登記費用の他に公証人費用がかかります。

不動産登記法 第二十二条(登記識別情報の提供)

登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報(or権利書)を提供しなければならない。
ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

不動産登記法 第二十三条(事前通知等)

1  登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報(or権利書)を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知【=事前通知】しなければならない。
この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。
2  登記官は、前項の登記の申請が所有権に関するものである場合において、同項の登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、同項の申請に基づいて登記をする前に、法務省令で定める方法により、同項の規定による通知のほか、当該登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、当該申請があった旨を通知しなければならない。
3  前二項の規定は、登記官が第二十五条(第十号を除く。)の規定により申請を却下すべき場合には、適用しない。
4  第一項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない【=事前通知は送らない】
一  当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人【=司法書士】によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供【=本人確認情報】を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。
二  当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第八条 の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。

いずれにしても、余分に費用や手間がかかることになりますから、権利書・登記識別情報は紛失などしないよう、大切に管理しましょう。