長男の相続権は強いですか?

現在の法律では、子の相続分は均等と定められています。

民法 第九百条 (法定相続分)

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

両親が同じ兄弟姉妹はもちろんのこと、片方の親が違っても、養子であっても、認知された非嫡出子であっても、全て同じ割合で相続権を持っています。

旧民法における家督相続制度

日本では、昭和22年以前は、長男が家督を全て相続する家督相続制度が採られていたため、その名残があって、長男の権利が強いと思われることがあるかもしれませんが、法律では、あくまでも、親に対する義務も相続する権利も、子ら全員に均等にあります。

旧民法 970条

被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ家督相続人ト為ル
一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者【一親等の直系卑属=子】ヲ先ニス
二 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス
三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス
四 親等ノ同シキ嫡出子、庶子及ヒ私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及ヒ庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
第八百三十六条ノ規定ニ依リ又ハ養子縁組ニ因リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看做ス

旧民法 986条

家督相続人ハ相続開始ノ時ヨリ前戸主ノ有セシ権利義務ヲ承継ス
但前戸主ノ一身ニ専属セルモノハ此限ニ在ラス

もちろん、これは法定相続分の話であって、相続人全員が遺産分割協議で合意すれば、遺産を誰が相続するかは自由に決められます。

民法 第九百七条 (遺産の分割の協議又は審判等)

1  共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる
2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

親の老後の面倒をみた子の相続権は強いか?

例えば、兄・弟・妹の3人兄弟で、父(母は先に亡くなっているものとします)と同居して最期まで面倒をみた弟が全部又は多めに父の遺産を相続することは、兄と妹が合意すれば可能です。

けれども、兄と妹の合意が得られない場合、それを不満として家庭裁判所に遺産分割調停などをおこしても、法定相続分どおりの割合(3分の1)で均等に相続する結果になると考えられます。

父の財産形成に大きく貢献したというような事情がある場合以外は、親と同居して最期まで面倒をみたとしても、当然の扶養義務の範囲内のこととして、調停の場面では考慮されないからです。

民法 第八百七十七条(扶養義務者)

1  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3  前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。