子は全て第1順位の法定相続人であり、父母に離婚等の事情が生じていても、父が死亡した場合の相続権に変わりはありません。
1 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
前妻が引き取って親権者となっている子についても、相続分があります。本人(未成年の場合は親権者)が相続を希望する場合、相続分を無くすことは出来ません。
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
遺言をした場合
再婚後の妻や子だけに、遺産の全てを相続させる旨の遺言をすることは可能です。
不動産の相続
不動産の相続については、有効な公正証書遺言があれば、原則として再婚後の妻や子からの単独申請で相続登記ができます。
預貯金・株式等の相続手続き
しかし、預貯金・株式等の相続手続きにおいては、遺言書の有無に関わりなく、銀行所定用紙に「前妻との子」も含めた法定相続人全員の署名・捺印(実印)を要求される場合があります。
したがって、遺言があっても「前妻との子」や「前妻」の協力がなく全ての相続手続きが進められるとは限りません。
遺留分減殺請求権
もし、遺言どおりの相続手続きが出来たとしたとしても、「前妻との子」には、遺留分(いりゅうぶん)があります。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属【=親】のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合【=子、配偶者】 被相続人の財産の二分の一
上記の事案では、「前妻との子」には1/8の遺留分があり、遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求権を行使することができます。
遺留分減殺請求は、内容証明郵便などで、「前妻との子」(又は親権者である前妻)が「後妻」や「後妻との子」に対して意思表示すれば権利行使できます。
その上で、「後妻」たちが応じなければ、裁判に訴えることになりますが、遺留分の請求そのものは裁判で行う必要はありません。
価格弁償
相続財産が不動産などの場合、遺留分に相当する金銭を支払うこと(価格弁償)が認められています。
1 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2 前項の規定は、前条第一項ただし書の場合について準用する。
期間制限
遺留分減殺請求権の行使には期間制限があり、以下の①または②のどちらか早いほうが経過すると、遺留分減殺請求権は行使できなくなります。
② 相続開始【=死亡】から10年間
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする
遺言等が特にない場合
不動産の相続登記や、預貯金・株式等の相続手続きを行う場合、法定相続分と異なる相続の仕方をしようと思えば、法定相続人全員の合意による遺産分割協議が必要です。
「前妻の子」も法定相続人の1人として、もし、「前妻の子」が未成年者であれば、親権者である「前妻」が法定代理人として協議に参加することになります。
「後妻」や「後妻との子」だけで遺産の全てを相続したいと考えていても、「前妻との子」(又は親権者である前妻)が合意しない限り、手続きが進みません。
遺産分割調停の申立てを行ったとしても、家庭裁判所の判断は、原則的に法定相続分どおりとなりますから、「前妻の子」は法定相続分を相続することになるでしょう。