不動産の全部事項証明書の見本
不動産の登記事項証明書は、いろいろな方法で取得できます。
大きく分けると3つの方法があります。
登記事項証明書交付申請書による請求
証明書発行請求機による請求
インターネットによるオンライン申請
しかし、それぞれの請求方法により下記の点で違いがありますので、比較しながらご説明させて頂きます。
法務局へ行かなければいけないか?
費用(コスト)はいくらぐらいかかるか?
取得に必要な時間はどれぐらいか?
①登記事項証明書交付申請書による請求
登記事項証明書交付申請書に不動産の表示を記載して請求する方法です。
法務局の窓口で申請する方法と、法務局へ郵送で申請する方法があります。
法務局の窓口で申請する方法
物件の表示を記載した登記事項証明書交付申請書を、法務局の証明書申請窓口に提出します。
共同担保目録欄の「現に効力を有するもの」か「全部(抹消を含む)」にチェックしておかれた方がいいと思います。登記事項証明書の印刷枚数が50枚を超えるような場合でない限り、特に発行手数料も変わりません。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
☞ 【Q&A】「抵当権を共同担保として設定する」とはどういう意味ですか?
☞ 【Q&A】共同担保目録とは何ですか?
登記事項証明書1通あたり600円の収入印紙を貼ります。収入印紙は、法務局内の印紙販売窓口で購入できます。
法務局までの往復交通費がかかります。
窓口の混み具合、取得する不動産の個数にもよりますが、申請後15~30分ぐらいで発行されます。
不動産の地番や家屋番号が分かっている場合は、どこの法務局でも交換システムにより取得できます。
不動産の地番や家屋番号が分からない場合でも、その不動産を管轄する法務局に行けば、備え付けのブルーマップで住居表示と地番の関係を調べられますし、法務局職員の方と相談しながら必要な登記事項証明書を請求できます。管轄法務局に行かなくても地番・家屋番号を調べる方法もありますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
☞ 【Q&A】住居表示から地番を特定して、不動産登記事項証明書を取得する方法を教えて下さい。
☞ 【Q&A】家屋番号の分からない建物の登記事項証明書の取得方法を教えてください。
☞ 【Q&A】地番(〇〇番地〇〇)と住居表示(○○番〇〇号)の違いを教えて下さい。
不動産を管轄する法務局は、こちらのホームページから調べることができます。
法務局へ郵送で交付申請する方法
物件の表示を記載した登記事項証明書交付申請書を、法務局へ郵送します。切手を貼った返信用封筒も同封します。
登記事項証明書交付申請書の用紙は、法務省ホームページの「各種証明書請求手続」のページの下記の部分からダウンロードできます。
登記事項証明書1通あたり600円の収入印紙を貼ります。収入印紙は、郵便局でも購入できます。
法務局への往復郵送料がかかります。
郵送した登記事項証明書交付申請書が法務局に着けば、大体当日中に発行してもらえると思いますが、往復にかかる日数を入れると、中1~2日はかかるでしょう。
不動産の地番や家屋番号が分からない場合は、その不動産を管轄する法務局に郵送して、平日昼間に法務局から連絡を受けられる電話番号、住居表示である旨のメモや物件所在地の地図などの資料を同封した方がいいでしょう。
連絡がつかずに不動産が特定できないと、申請書だけが返送されてきてしまいますので、ご注意下さい。
郵送の場合は、ブルーマップを見ながら法務局職員の方と相談できないのが難点です。
②証明書発行請求機による請求
法務局に設置されている証明書発行請求機を利用して、登記事項証明書を取得することができます。
端末のタッチパネルを操作して、「全部事項証明書」→「土地 or 建物」→「都道府県」→「市区町村」→「町名」→「○丁目」→「地番 or 家屋番号」→「通数」→「請求者氏名」などのデータを入力すると、整理番号票が発行されます。
5~10分ほどで名前が呼ばれますので、整理番号票と収入印紙を渡して、登記事項証明書を受け取ります。
1通あたり600円の手数料で収入印紙で支払います。手数料の額は、登記事項証明書交付申請書の場合と変わりません。必要な収入印紙の金額は、整理番号票に記載されていますので、名前を呼ばれる前に法務局の印紙販売窓口で購入しておきます。
法務局へ行かなければいけないので、往復の交通費がかかります。
タッチパネルの入力方法が分からない場合は、職員の方が教えてくれます。
地番・家屋番号が分からないと申請できませんので、地番・家屋番号を調べてから入力して下さい。
登記事項証明書交付申請書による方法と比べると、法務局職員による入力作業が不要で職員の方の労力削減になりますし、自動的に登記事項証明書が発行されるため、請求者側にも発行までの時間が早いメリットもあるので、法務局では証明書発行請求機による方法を推奨しています。
入力に関する注意事項
前に入力した物件のデータを複写して、次の物件のデータを入力できますので、同じ所在で地番と家屋番号が似ている土地・建物などは、複写機能を利用すると入力が楽です。
異なる種類の証明書は、1回の申請では入力できません。例えば、全部事項証明書・現在事項証明書・閉鎖事項証明書・地図(公図)・地積測量図・建物図面などを同時に申請することはできません。
参考記事
☞ 【Q&A】不動産の全部事項証明書、現在事項証明書、一部事項証明書、閉鎖事項証明書はどう違うのですか?
共有者の1人に関する一部事項証明書は、そもそも証明書発行請求機では申請できません。
コンピュータ化されている登記簿であれば、全国どこの不動産でも交換システムにより取得できますが、違う管轄に属する不動産同士(ex 東京と大阪の不動産)を1回の申請では入力できません。
1回の申請で入力できない場合は、請求者名を何度も入力しないといけないので、大変です。また「なぜ申請を分けなければいけないのか?」「なぜ申請できないのか?」が分からないと混乱して入力ミスをしたりするので、以上の点などを参考にしてみて下さい。
③インターネットによるオンライン申請
法務省が運営している「登記ねっと 供託ねっと」というホームページから、インターネットを利用して不動産の登記事項証明書を取得することができます。
不動産の登記事項証明書をオンライン申請により取得する場合「申請用総合ソフト」と「かんたん証明書請求」という2つの方法が用意されています。
申請用総合ソフト
法務省ホームページのダウンロードページから無償提供されているソフトをダウンロードします。
「かんたん証明書請求」と違って、登記事項証明書を取得できるだけでなく、所有権移転登記や抵当権抹消登記などの登記を申請することもできて、多機能です。
セキュリティが厳しく、パソコン環境の構築や電子署名に関する準備が大変です。
司法書士や土地家屋調査士といった登記手続きの専門家が利用することを想定しています。
従って、一般の方が登記事項証明書だけを取得するのであれば、そのために用意された「かんたん証明書請求」を利用すべきだと思います。
かんたん証明書請求
原則としてインターネット・エクスプローラーなどのブラウザ上でデータを入力するだけで申請できます(ただし、通信セキュリティのため、政府共用認証局の自己署名証明書のインストールは必要になります)。
最初に申請者情報を登録しなければいけません。大まかにはよくあるネット上の会員登録と同じ流れです。詳しくは法務省ホームページのかんたん証明請求による請求手順のページをご覧ください。
申請者情報登録画面でID・パスワード・メールアドレス・住所・氏名等を入力して仮登録
仮登録完了メールに記載されている認証情報を入力
申請者情報登録完了
証明書請求メニューの中から不動産の「登記事項/地図・図面証明書交付請求書」をクリック
「オンライン物件検索を使う」をクリック
「オンライン物件検索を使う」は、法務局の登記簿データベースの中から実際に存在している市区町村名・町名を選択していきますので入力が楽ですし、「物件情報を直接入力する」場合のようにミスも発生しにくいからです。
「土地 or 建物」→「都道府県選択」→「所在選択」ボタンをクリック→「市区町村選択」→「町名選択」→「地番・家屋番号」を入力して「追加」ボタンをクリックします。
「地番・家屋番号一覧ボタン」を押すと、実際に存在している地番・家屋番号の一覧を調べることができます。
地番や家屋番号は同時に10件まで入力できます。但し、土地と建物は同時に入力できません。
「追加」ボタンをクリックしたら、次の物件を入力できます。
実際に存在しない不動産の情報を入力した場合、エラーが表示されます。
すべての物件を入力して追加できたら「確定」ボタンをクリックします。
「証明書交付請求画面に直接反映する」を選択します。
「登記事項/地図・図面証明書交付請求書」画面に変わりますので「共同担保目録→現在事項 or 全部事項」と「通数」を入力して「次へ」ボタンをクリックします。
不動産の表示は自動入力済みです。
共同担保目録については以下の記事をご覧ください。
☞ 【Q&A】「抵当権を共同担保として設定する」とはどういう意味ですか?
☞ 【Q&A】共同担保目録とは何ですか?
郵送で受け取る場合,交付情報の入力画面で下記の情報を入力します。
請求者(氏名)
交付方法→郵送
郵送種別→普通 or 簡易書留 or 書留
速達区分→(指定なし) or 速達
送付先の「郵便番号・住所・氏名」
請求先の登記所
オンライン申請で交付方法が「郵送」の場合、登記事項証明書1通あたり500円になります。
普通郵便による郵送料は無料です。簡易書留(310円)・書留(430円)・速達(280円)を選択すると、それぞれの手数料が加算されます。
送付先の「郵便番号・住所・氏名」は、「請求者(氏名)」と必ずしも一致していなくても構いません。直接、登記事項証明書の必要な人や場所に郵送することができます。
「請求先の登記所」は、送付先の住所に近い法務局をお薦めします。 管轄登記所は不動産の表示から自動的に入力されていますが、登記事項証明書は交換システムによりどの法務局でも取得可能ですから、「請求先の登記所」を選択できるようになっています。
送付先の住所から遠い法務局を選択すると配達が遅れてしまうだけなので、できるだけ近い法務局を選択すべきです。
当事務所では一番近い大阪法務局東大阪支局を選択していますが、普通郵便でも大体翌日には届いています。しかし、申請した時刻が15時~16時以後だと発送してもらえるのが翌日で到着が翌々日になる場合もあります。
法務局窓口で受け取る場合、交付情報の入力画面で下記の情報を入力します。
請求者(氏名)」
交付方法 → 窓口受取
受取人情報の「郵便番号・住所・氏名」
受取場所とする法務局
オンライン申請で「窓口受取」を選択した場合、登記事項証明書1通あたり480円になります。
法務局に行くので、往復交通費とその時間がかかります。
法務局に受け取りに行くタイミングは、少し遅めの方がいいです。パソコンの画面上で「処理済み」となっていても、実際に法務局で発行され受け取れる状態になっていない場合があります。法務局の混み具合にもよりますが、当事務所で受け取りに行く場合は、申請後3~4時間ぐらい経過してからにしています。
受取人情報の「郵便番号・住所・氏名」は、「請求者(氏名)」と必ずしも一致していなくても構いません。直接、登記事項証明書の必要な人が法務局窓口で受け取れます。
「受取場所とする法務局」は、受け取る方が行かれる予定の法務局を指定します。登記事項証明書は交換システムによりどの法務局でも取得できますから、不動産の管轄法務局でなくても指定できます。
登記事項証明書を受け取りに行く際、「照会内容確認(電子納付情報表示)」画面を印刷して持っていかなければいけません。これは手数料をインターネットバンキングで振り込んだ後に出る画面ですが、請求者と受取人が違う場合は、この画面をPDFファイルにしてメールで送るなり何らかの方法で受取人が持っていけるように手配しなければいけません。
「入力内容の確認」画面が表示されますので、申請内容全体を確認してOKであれば「確定」ボタンをクリックします。
「処理状況照会」画面が表示されますので「納付」ボタンをクリックします。
「納付」ボタンが表示されるまで少し時間がかかります。「納付」ボタンが表示されていない場合は、インターネット・エクスプローラーなどのブラウザの更新ボタンを何度か押してみてください。
「電子納付情報表示」画面が表示されますので「電子納付」ボタンをクリックします。
金融機関選択画面になりますので、インターネットバンキングができるご自分の口座から振込手続きをします。
口座振り込みが完了すると「納付状況」欄が「納付済み」と表示されます。
交付方法で「窓口受取」を選択した場合は、「納付」ボタンをクリックして表示される「電子納付情報表示」画面を印刷した用紙を法務局にお持ち下さい(法務局職員の方が申請内容を確認するため必要になります)。「処理状況照会」画面で「手続き終了」と表示されていても、必ずしも登記事項証明書が発行されていない場合もありますので、当事務所では3~4時間ぐらい経過してから法務局に受領に行っています。
交付方法で「郵送」を選択した場合、後は登記事項証明書が郵送されてくるのを待つだけです。近い法務局を「請求先」に指定していれば、普通郵便を選択しても大体翌日に到着しています。15~16時頃に申請した場合は、法務局の混み具合にもよりますが、発行が翌日で、到着が翌々日になることもあります。
ポイント
登記事項証明書は、取得方法によってコストやかかる時間が様々ですが、ポイントをまとめます。
一番早いのは、近くの法務局へ行って証明書発行請求機で交付申請する方法です。
一番安いのは、インターネットによるオンライン申請をしてから、近くの法務局へ行って窓口受取りする方法です(法務局への往復交通費を除く)。
(印刷枚数が50枚を超えない限り)手数料は変わらないので、共同担保目録つきで取得することをお薦めします
不動産の地番・家屋番号が正確に分からない場合は、証明書発行請求機とオンライン申請は使えません。
参考記事
☞ 【Q&A】住居表示から地番を特定して、不動産登記事項証明書を取得する方法を教えて下さい。
☞ 【Q&A】家屋番号の分からない建物の登記事項証明書の取得方法を教えてください。
不動産一部事項証明書は、登記事項証明書交付申請書でしか取得できません。
コンピュータ移記前の閉鎖登記簿謄本や電子化不適合簿は、電子情報になっていないため、その不動産の管轄法務局でしか取得できません(交換システムは使えません)。管轄法務局が遠方で行けない場合は、少し時間はかかりますが、登記事項証明書交付申請書を管轄法務局に郵送して取得することができます。